08.古代ローマ帝国の金貨(ウェスパシアヌス帝)

この連載では、アンティークコインを主に投資面から概観しています。今回ご案内するのは古代ローマ帝国の金貨ですが、この時代の貴重な金貨の価格は2010年代から上昇し続けているのが特徴です。

FXと同様、誰が何を買っているかという情報は表に出てきませんが、どうやら中国人が買っているようです。すなわち、大勢の中国人が経済力の向上を背景に貴重な金貨を買い、それが価格上昇を招き、それを見た投資家がさらに買って価格が上昇するという好循環になっているようです。

将来の価格は将来になってみなければ分かりませんが、この状況が継続すればさらなる価格上昇を期待できます。

 

ウェスパシアヌス帝の金貨

では、コインの画像やスペックを見ていきましょう。

下は、ウェスパシアヌス帝(在位69年~79年)の金貨です。高校時代に世界史を勉強したという人でも、この皇帝の名前をご存知の方は少ないことでしょう。2,000年も前に発行されていますから、摩耗が少ない金貨が現代に残されているのは貴重であり、価格もそれにふさわしいものになっています。

  

https://www.darumacoins.co.jp/products/detail.php?product_id=9231

スペックは以下の通りです。

・材質:金
・品位:0.999(純度99.9%)
・直径:20mm
・発行年:西暦74年
・グレード:EF(極美品)

ちなみに、グレードとは、コインの状態が発行時の状態にどれほど近いかを示す指標であり、最高ランクは完全未使用です。

しかし、2,000年も前のコインで完全未使用を探してもほぼ存在しませんので、現実的にはVF(美品)からEF(極美品)あたりがコレクションの対象になりますが、EFのコインは残存数が少ないので価格が跳ね上がる傾向にあります。

価格確認及び購入は、販売会社(株式会社ダルマ)のホームページからお願いします。

 

価格の妥当性

なお、ダルマのホームページでご覧いただくと、ずいぶん高額だと感じるかもしれません。なぜなら、金の純度は99.9%ですが重量は7.35gであり、この記事執筆時点の金相場で計算すると、この金貨の材質の価値は5.5万円くらいだからです。

すなわち、価値のほとんどは材質以外の部分、すなわち、デザイン・摩耗の少なさ・歴史・人気等で構成されています。

そこで、この金貨価格の妥当性を検証してみましょう。同種の金貨が数多く現存するなら、電化製品等をネット販売で買うときのように他店の販売価格と比較検討できますが、この金貨はそもそも現存数が少ないため難しいです。

そこで、直近の世界のオークションから類似例を探したところ、1例見つかりました。Numismatica Ars Classica NAC AG(スイス)で2021年11月17日に実施されたオークションにおいて、同種の金貨が2万スイスフラン(手数料込で300万円以上)で落札されました。

この金額ですが、オークション参加者が競り合って価格が吊り上がったのではなく、主催者の予想落札価格が2万スイスフランでしたので、妥当な落札価格だったということになります。

ということは、ダルマで販売している金貨は激安なのか?ですが、そうではなく、スイスのオークションの出品物のグレードの方が少し高く、それが価格に反映されています。

アンティークコインはグレードが高くなればなるほど高額になりますが、この種のコインで高グレードのものは現存数がとても少ないため、少しのグレード差で価格が大きく開く傾向があります。

このように、世界中のオークションを探してようやく1例見つかるというくらいですから、この金貨の現存数の少なさが容易に想像でき、それがダルマでの販売価格に反映されていると言えるでしょう。一言で評価するなら、貴重な逸品です。

お願い:
(株)ダルマでコインを購入すると、
「どこから情報を得ましたか?」という趣旨の質問を受けるでしょう。
その際、「ゆったり為替から情報を得た」と答えていただけますと幸いです。
「鹿子木さんのサイトから」と回答しても、
(株)ダルマに理解してもらえないためです。

09.古代ローマ帝国の金貨(アントニヌス・ピウス)